特集:全ての共働き夫婦・カップルのための名前のない家事 について考えてみた
いまや全世帯に占める「共働き世帯」は65%を超え、家事は男女で分担するのが「当たり前」の時代にはなりました。しかし掃除、洗濯、炊事、育児など家事が多岐に渡る中で男性が「自分が協力している家事」として挙げる二大家事は未だに「ゴミ出し」と「皿洗い」で、共働き世帯で男女が「家事」に割く時間には、大きな開きがあります。そんな中で昨今注目を集めているのが「名前のない家事」という概念です。フライパンを振るのが炊事という家事なのではなく、一週間の献立を考えて買い出しをしたり、保存食を作ったり、冷蔵庫にある食材の賞味期限を確認したり、こうした無名の家事が家の中には無数にあり、特に男性はこれに「気づく」事が少し苦手なのです。夫婦間のストレスにもなるこうした「名前のない家事」についての考え方を、今回は「夫が知らない家事リスト」の著者であり、芸人の妻として、ご自身も放送作家やNSCの講師、シナリオ制作などで活躍されている野々村友紀子さんをゲストに招いて、効率の良い家事や家事のシェアについて読者エディターさんとの座談会形式で考えてみました。
家事リストはお互いがイライラしないために存在する
「夫が知らない家事リスト」との著書名から、勝手な先入観で猛烈に夫の家事へダメ出しをするのだと思っていた野々村さんの家事に対する考え方は、意外にも「夫に気づきを与えて成長してもらう」という育てる優しさにも似た、対人関係の極意とも言える内容でした。
共働きで家事を上手く回す。その極意を教わりました。
著書の中で、家の中にある「夫が気づいていない、名前のない家事」を実に211項目に渡ってリスト化された野々村さん。お風呂の掃除だけでも「壁・ドア・鏡・手すりを洗う」「フタを洗う」「洗面器・椅子を洗う」「髪の毛を取る」といった具合です。ひとつひとつ言われればなるほどと思うものの、皿洗いのようにこれが毎回自分の分担になると億劫だなと感じる作業ばかりで、家事力の低い男性には耳の痛い話に聞こえます。
しかし、野々村さんによればこの家事リストは「分担」ではなく、あくまで「気づき」のためのもの。「この中の100個やって」と全てを分担してしまうと、忙しくて出来ない、忘れたという「出来ない」「やってない」にお互い腹が立ってしまうので、まずは名前のない家事がこれだけあると把握して、気づいてもらう。「これを今やっているから次はこれやるだろうな」と徐々に男性(家事の時間が短く不得意な側)に意識と気づきが出ることで、自然な分担が出来ていくのが理想とのことでした。
忙しくて出来ない、悪気があってやらないのではなく、共働き世帯で家事の時間が短い人はそもそも「そういった家事がある」との認識が無いからやらない。そこに気づきを与えて育てていく。そう聞くと、著書の痛快な語り口も、家事が出来ない自分を優しく育ててくれているような気持ちで読める人も多いのではないでしょうか。
実際に、この211項目を最初に書き上げて、野々村さんが旦那さん(お笑いコンビ・2丁拳銃の修士さん)に「この中で自分がやっているものに◯を付けてみて」と渡したところ、◯はわずか8個だったそうです。それで気づきが生まれ、見違えるように家事の協力が得られるようになったと語る野々村さんの笑顔に、当初激しいダメ出しを受けて落ち込んでしまうのではと恐れながら撮影現場に向かったACTIS編集部の男性スタッフは、菩薩を見るような気持ちで「夫が知らない家事リスト」を握りしめて帰宅したとのこと。
次ページからは、ACTIS読者エディターとして取材に同行してくれた三人の女性を交えて、家事に関する座談会をお送りします。今回「家事」というテーマを少しでも優雅に語り合おうと、ロケ場所は、さまざまな工夫をこらした共働き家族のことを考えた家を提案する、住友林業さんのモデルハウスをお借りしました。
家事を好きでやってると思って欲しくない。誰もやらんからやってるだけ。
今回座談会に参加してくれたのは、「つなげーと」上で運営する「ACTISエディターズコミュニティ」で募集した読者エディター三名の皆さん。独身・既婚などライフステージは様々ですが、皆さん「ニガテな家事」が必ずあるのが印象的でした。
ゆのまる:皆さんニガテな家事ってありますか?私、洗剤とかの詰め替えがヘタで(笑)
野々村:あー、わかる。攻めちゃうんでしょ、何回分っていう大容量の詰め替え、もう少し入るかなと思うと大体こぼれますよね。
のん:私は排水口かな。
あすか:私も排水口。あと水回りの水垢。旦那が洗い物はやってくれるんですが、その後の掃除とかはあんまり得意じゃないみたいで。
野々村:男の人って水が見えてへんのかなと思うぐらい鏡やシンクに飛んだ水を拭いてくれないでしょう。基本一個のことしか見えてへんから、全力で皿洗いして、水垢のもとになる水は見てない。じゃなかったら、水は蒸発するからええと思ってるのか。
一同:(笑)
野々村:私は加湿器に水入れるの、めっちゃ嫌いなんですよ。地味に待つ時間も嫌やし、こぼれるし。この時期は絶対使うから、もう水道と直結してくれたらええのにと思いますね。
のん:入れたあと容器を逆にして、みたいなのが面倒じゃないですか。絶対こぼれる。
あすか:ゴミの分別も面倒ですね。野々村さんはどういう風に分別されてるんですか?
野々村:ペットボトルのラベルとか、面倒ですよね。もうボトルに直に商品名とか書いてくれてええのに。
うちはね、ゴミはでっかい袋に全部放り込んで、あとは旦那が分別。その袋に入れといたらあら不思議、分かれてます(笑)
一同:いい案があるのかと思った!(笑)
野々村:全自動ですよ?(笑)家事なんて、基本なんでも嫌なもんですよ。家事を好きでやってると思わんといて欲しいですね。誰もやらんからやってるだけで。
ゆのまる:やってる人しか気づかないことが沢山あるから、こうやって「家事リスト」を書き出してもらうだけでも違いますよね。
野々村:私も最初ご飯も炊けなかったんです。飯盒炊さんのやり方しか知らなくて、計量カップ見て「こんな便利なものがあるんか」と思ったぐらい。一人やったらやらないと思います。家族がいるから(家事を)やる。自分が面倒だと思うことを無理に旦那と分担して完璧を目指しても、「やってない」ことに腹立てたら終わりでしょう?まずはリスト化して「こういう家事がある」ことを把握して貰って、そこから自然に分担できるのが理想です。洗濯物も、黙って置いといても誰も畳んだり、しまってくれない。本当に「私が好きでここに干して、好きでここに置いてる」と思ってるのか(笑)リストがあるから今は布団カバーを洗ったら、旦那が中に潜って四隅の紐を結んで付けてくれる。あれ嫌いなんですよ、布団カバー替えるの。
一同:分かる〜!(笑)
あすか:間違えて結んじゃって、できた!と思ってからイライラすることありますね。
野々村:まあ、旦那も付けるの遅いから、最初は「ちゃうちゃう」とか言いながら優しく見守ってましたけど、今はもう横で真顔で見てます(笑)
ゆのまる:自動で紐結んでくれる布団って無いんですかね(笑)
野々村:布団は無理でもさっきの排水口とかね。あれこそ全自動で綺麗にしてくれる機能あったらええのに。
のん:お風呂上がりにボタン押したらガーッと洗ってくれる的な。
野々村:そうそう、排水口で生ゴミ分解する機械もあるんやから、出来そうな気がしますけどね。全国の主婦が開発費出しますよ(笑)どこから来るんやろうかと思うぐらい、毎日毎日定位置に戻ってくるみたいに増えるホコリもね。壁が自動で吸ってくれる家とかね。
あすか:巨大な掃除機の中に住んでるみたいな感じですか?
野々村:家事は延々と「元の(綺麗な)状態に戻す」作業なんで、最近減ってきましたけど、部屋の縁とか枠とか、ホコリが溜まりやすい箇所は最初から作らないとか、家事を減らすより「その家事が消える」家とか、家の工夫がこれから増えていくと良いですね。
撮影協力
住友林業株式会社
「仕事も家族も。共働きの家」をテーマに掲げる「DUE CLASSO」ほか、木の風合いを活かした住宅を豊富に揃える住友林業。今回は品川シーサイド住宅展示場(品川区東品川4-4-7)内のモデルハウスにお邪魔しました。全国の住宅展示場検索はホームページから。
https://sfc.jp/ie//